アパート④

その他

ゴールデンウィークの中日(なかび)に不動産会社の方が母のところへ来て、決済の日に持って行くものを最終的に確認をしてもらいました。

ゴールデンウィークが明けてすぐ、決済の当日はまずは銀行に行って窓口で仲介手数料を下ろさないといけませんでした。

10時前に銀行に着くとキャッシュデスペンサーは長蛇の列。窓口の方もいつもよりも混んでいる状況でした。

買い主さんの指定した銀行に行く約束の時間は11時でした。母の住む最寄り駅から急行で1つ先、電車で10分掛かるとして 10時45分くらいまでに電車に乗れば大丈夫と思っていましたが、お金を下ろせたのは10時30分すぎ。ゴールデンウィーク明けだったから銀行にもっと早く来れたら良かった・・・。いつもお世話になっている銀行の担当者さんとも合流し、一緒に同行していただけるということで母と私では心細かったので助かりました。

電車は何かトラブルがあってダイヤが乱れているとうい情報でしたが、ほぼ時刻表通りに来た電車に乗り込み、1つ先の急行停車駅へ。私は久しぶりにその駅に行ったので浦島太郎状態。慌てていたのでちょっと遠回りに歩いてしまい2、3分遅れて到着しました。

応接室には先方の買い主さん、買い主さん側の不動産会社さん、司法書士さん、売り主側の不動産会社さんがすでにお待ちでした。母は次々にお名刺をいただき、挨拶を受けて着席。私はこういった緊張する場がとても苦手で、しかも応接室には人が多く息苦しく感じましたが、坦々と進んでいくうちに落ち着いてきました。

まずは、振り込み先の銀行名、母の名義を私が記入しました。母は母で次々に渡される書類に住所や署名をしていき、不動産会社さんが最終的に母の実印で捺印していき、次から次の流れ作業で何に署名しているのかよく分からない状態でした。

ちょっと落ち着いたところで、登記識別情報を司法書士さん、引き渡す書類を買い主さんに渡し、不動産会社さんに仲介手数料の支払い、司法書士さんへ抵当権抹消の費用の支払いも済ませました。

同時進行で、買い主さんの銀行から母の銀行口座に振り込みがされているか、その確認のために一緒に同行してきてくれた、いつもお世話になっている銀行の担当者さんが電話をして確認をとっていました。まだ入金が確認されていないので、確認ができたら折り返し連絡が入れて下さい、とやりとりをしていました。この確認が終わらない限りこの場は終わらないのだと分かりました。

買い主さんとは応接のテーブルをはさんで向かい合って、真ん中にアクリル板がありました。このアクリル板があることで私は気持ち的にホッとできました。買い主さんは見たところ私よりちょっと年齢が上くらいの50代でしょうか。いくつか賃貸物件を所有し、現在もどちらかでマンションを建設中というお話で、こういった場には慣れているようでした。

買い主さんから、「建物を建てられる前は何だったのでしょうか」、私「畑でした」

買い主さん「何か事故とか、問題とかありましたか」、私「ありません」

最近は自然災害など色々とあるので、しっかりした物件、大手メーカーさんの物件がいいと思っていたそうで、昭和50年代に建てたアパートも今回のアパートも某大手メーカーで建てていました。こういうことも買っていただく決め手になったようで、父が選んだメーカーで間違いはなかったようです。

なかなか入金確認の連絡が入らず、ちょっと重い空気。沈黙の時間…。

買い主さんが、「お母様と同居されているのですか?」私「いえ、別なんです」

買い主さん「私の父も一人暮らしで、週1回通っているのですよ。いま82歳になります」

私「82歳ということは、昭和15年生まれですか?亡くなった父も昭和15年生まれでした」

ちょっと空気がなごんだ時に、ちょうど銀行から入金確認の連絡があり、なごんだ空気も終わりました。

時間にして1時間くらい。重い空気でしたが気がつけば、あっという間に終わりました。応接室から出るとき、何となくこの方なら物件をお願いできるなと思いました。

所有していたものを手放すには心が痛みました。ましてや父と母が苦労して建て維持してきたアパートでしたので寂しい思いがあります。

一方で、約45年前に畑だった土地を父が購入して、そこにアパートを建て、ずっと実家の家計を助けてきてくれた土地とアパートにはありがとうございましたと感謝の気持ちです。かつて父がご縁があってその土地を地主さんから譲り受けたように、今回も次の買い主さんに気持ちよくお渡ししないと。

帰っているとき母に、久しぶりに父が行きたがっていた『ひょうろくだま』に食べに行ってみるかと聞いてみると、「昔、あんこ(私)が食べるものがなくてね」「魚嫌いだったから、目玉焼きでも作って下さいって、お店の人に頼んだのよ」と、思い出話をしてくれました。

もう一度、行ってみるかと聞いてみますと、「もういいわ」とあっさり。最後にアパートを見に行けば良かったねと私が話すと、母は「もうアパートは売ったのだからいいわよ」

母の方がよほど、前を向いて歩いていると思いました。私もしっかり気持ちを切り替えていかないといけないと思いました。

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